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知的財産権・知的資産

歌手等の著作隣接権という権利について

舞台の演出家をしていますが、演出は著作権法で保護されますか?

舞台の演出家の演出は著作権法で保護されています。
演出とは、物事を表現するときにそれを効果的に見せることをいい、演出を担当する者のことを演出家といいます。
演出家は、著作権法では「実演家」として定義されています(第2条第1項第4号)。「実演家」とは、「俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者、および実演を指揮し、又は演出する者をいう」とされており、具体的には、歌手、演奏家、俳優、指揮者、劇の演出家などが該当します。
そして「実演家」は、著作物を公衆に伝達するために重要な役割を果たしているため、「実演家人格権」、「著作隣接権」が認められています。「実演家人格権」は、実演家の人格的利益を保護する観点から、また「著作隣接権」は、実演家の財産的利益を保護する観点からそれぞれ付与されています。著作隣接権は著作権と同様に、何ら手続きを要しないで付与されます(第89条第5項)。また、著作権と著作隣接権はそれぞれ独立に認められており、著作隣接権が及ぶからといって著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならないとされています(第90条)。
このように、演出家は自身で演技をしているわけではありませんが、演劇を演出してその意図の下に演技者に演技をさせる者であるため、著作権法上では演技者と同じように「実演家」として保護されています。

参照条文:著作権法第2条第1項第4号、第89条第5項、第90条

フィギュアスケート競技会の演技は著作権法の保護対象になりますか?

フィギュアスケート競技会の演技は、もっぱらスポーツ上の演技ですから、一般に著作権法上の実演としては認められず、著作権法の保護の対象とはならないと考えたほうがよいでしょう。
著作権法上の実演とは、「著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗読し、又はその他の方法により演ずる」ことをいいます(第2条第1項第3号)。またこの実演には、例えばサーカスや奇術のように著作物を演じなくても芸能的性質を有する行為も含まれます。
ところで、フィギュアスケート競技会の演技とアイススケートショーの演技は、著作権法上では取り扱いを異にしています。アイススケートショーの演技は著作物を演じてないかもしれませんが、芸能的な性質も有する行為ですから、通常は著作権法上の実演として保護されます。
しかしながら、フィギュアスケート競技会の演技は著作物を演じているとはいえず、また芸能的性質を有する行為でもなく、もっぱらスポーツ上の演技と考えられるため、一般に著作権法上の実演としては認められず、著作権法の保護の対象とはならないと考えられます(第2条第1項第3号)。

参照条文:著作権法第2条第1項第3号

実演家の権利には、どのようなものがありますか?

実演家の権利には、実演家人格権と著作隣接権があります。
実演とは、著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗読し、またはその他の方法により演ずることをいいます。これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものも含みます(第2条第1項第3号)。
実演家とは、俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者および実演を指揮し、または演出するものをいいます(第2条第1項第4号)。実演家に認められた演奏家人格権としては、氏名表示権、同一性保持権(第90条の2第1項、第90条の3第1項)があります。実演家人格権も著作者人格権と同様に、実演家に固有の権利として認められたものであり、譲渡できない一身専属的な権利とされています。人格権であるため、その実演家が死亡すれば消滅します。
一方、実演家に認められた著作隣接権には、録音権および録画権(第91条第1項)、放送権および有線放送権(第92条第1項)送信化可能化権(92条の2第1項)、商業用レコードの二次使用料請求権(第95条第1項)、譲渡権(第95条の2第1項)、および商業用レコードの貸与権・報酬請求権(第95条の3第1項)、有線放送による同時再送信における報酬請求権(第94条の2)があります。

実演家人格権 氏名表示権 実演の公衆への提供または提示の際に実演家名を表示するか否か、および表示するとすれば実名(本名)か変名(芸名等)かを決定する権利
同一性保持権 実演について無断で名誉・声望を害するような改変(変更・切除・その他の改変)をされない権利
(財産権としての)著作隣接権 許諾権 録音権・録画権 実演を録音または録画する権利
放送権・有線放送権 実演を放送または有線放送する権利
送信可能化権 インターネットのホームページなどを用いて、公衆からの求めに応じて自動的に送信できるようにする権利。「送信可能化」とは、ネットワークに接続されているサーバーに情報をアップしたり、情報が入力されているサーバーをネットワークに接続することによって、自動的に公衆に送信し得る状態にすることをいい、実際に送信されたか否かは問いません。

なお、「送信可能化権」には、次のように二つの例外が認められています(第92条の2第2項) 。

・実演家の許諾を得て録画された実演を送信可能化する場合には、送信可能化権が働きません。

・実演家の許諾を得て映画の著作物において、録音・録画された実演でサントラ盤レコードなどの録音物以外のものに録音・録画された実演を送信可能化する場合には、送信可能化権が働きません。
譲渡権 実演の録音物または録画物を公衆に譲渡する権利
貸与権など 実演が録音された商業用レコードを公衆に貸与する権利(最初に販売された日から1年間を超えない範囲に限り貸与権を有し、その期間経過後は、貸レコード業者から報酬を受ける権利(報酬請求権)に変わる)
商業用レコードの二次使用料請求権 商業用レコード(市販用のCDなど)が放送や有線放送(同時再送信を含む)で使用された場合、非営利・無料で放送を受信して同時に「有線放送」する場合を除き、使用料を放送事業者や有線放送事業者から受ける権利(あくまでも使用料請求権であり、実演家は許諾権を行使することはできません)。
有線放送による同時再送信における報酬請求権 生の実演を含んでいる放送を受信して同時に「有線放送」する場合の報酬請求権。ただし非営利・無料で行われる場合には、この権利は及びません。

参照条文:著作権法第2条第1項第3号および第4号、第90条の2第1項、第90条の3第1項、第91条第1項、第92条第1項、第92条の2第2項、第94条の2、第95条第1項、第95条の2第1項、第95条の3第1項

実演家の「ワンチャンス主義」について教えて下さい。

実演家の著作隣接権の一つである録音権・録画権について、映画の製作時に自分の実演を録音・録画することを了解した場合には、以後その実演を利用することについて原則として権利が及ばないとする主義のことです。
実演家は、その実演を録音または録画する権利を専有するものとされています(第91条第1項)。したがって、生演奏の録音・録画や音楽CDからのダビングなどには実演家の許諾が必要となり(第2条第1項第13号および第14号)、これらの行為を無断で行うことは実演家の録音権または録画権の侵害となります。しかしながら、実演家の許諾を得て録音・録画された「映画」の著作物における実演については、その後その映画の著作物が複製される際には権利が及ばないものとされています(第91条第2項)。これを「ワンチャンス主義」といい、例えばその映画をDVD化して販売(複製物の譲渡)しようとする際には、改めてその映画に出演した俳優等実演家の許諾を得る必要はないものとされています。その他映画の放送・有線放送、送信可能化についても同様に「ワンチャンス主義」により権利は及びません。
ただし、その映画から別にサントラ盤レコードを作成するなど、録音物に収録する場合には、実演家の録音権が及びます(第91条第2項)。 また、実演の放送について実演家から許諾を得た放送事業者は、その実演を放送のために録音・録画することについて、重ねて実演家からの許諾は必要としません。ただし、契約に別段の定めがある場合、および許諾の対象となった番組以外の番組のために録音・録画する場合は、実演家から許諾を得た放送事業者といえども、無断で録音・録画はできません(第93条第1項)。また、放送のための録音・録画物の提供を受けた放送事業者がこれを放送以外の目的に使ったり、さらに他の放送事業者の放送のために提供することもできません(第93条第2項)

参照条文:著作権法第2条第1項第13号および第14号、第91条第1項および第2項、第93条第1項および第2項

音楽CDをインターネット上にアップロードする場合、実演家の許諾は必要ですか?また、他にどのような権利許諾が必要ですか?

3種類の権利者が関係しており、それぞれの許諾が必要です。1. 楽曲の著作権者(作詞家、作曲家等)、2. 実演家(歌手、演奏家等)、3. レコード製作者
市販のCDから音楽をインターネット上にアップロードする場合、楽曲の著作権者(作詞家、作曲家等の公衆送信権)の許諾に加えて、音楽CDにかかる実演家(歌手、演奏家等の送信可能化権)およびレコード製作者(レコード原盤の作成者等の送信可能化権)の許諾が必要になります。
許諾先および手順としては、以下のようになります。

  1. 楽曲の著作権については、ほとんどの場合、JASRAC等の著作権管理団体にインタラクティブ配信(自動公衆送信)についての許諾を得ることになります。JASRAC管理作品かどうかは、インターネット上のデータベース検索サービス「J-WID」で検索することが可能です。また、音楽情報の総合ポータル・サイト“Music Forest”(音楽の森)からも、音楽作品の著作権の所在、アーティスト情報、CDに関する情報を得ることができます。JASRACの場合、基本契約書はホームページからダウンロード可能で、郵送にて提出することになります(許諾までにかかる期間は通常10日~2週間程度)
  2. 実演家については、市販のCDの場合、実演家の権利をレコード製作者に譲渡している場合が多いので、レコード製作者と契約を結ぶことになります(送信可能化権の許諾)。
  3. レコード製作者についても同様に、送信可能化権について許諾契約を結びます。

以上が大体の手続きですが、アレンジャー(編曲家)の権利については多少業界の慣習があり、レコード製作者がアレンジ(編曲)した楽曲(二次的著作物に当たる)の権利を買取ることにより処理されています。しかし、その権利の行使に関しては、レコード製作者の側が控えているというのが現状です。
ただし、買取りによらずJASRACの公表時編曲制度を利用することにより、アレンジャー自身が著作権使用料を受け取ることも可能です。

参照条文:著作権法第23条、第92条の2、第96条の2

映画をインターネット上にアップロードする場合、どのような権利者に許諾を得ればいいのでしょうか?

映画製作者のほか、映画の原作となった小説、脚本の著作権者、映画の中で利用されている音楽等の著作権者の許諾が必要です。
映画をインターネット上にアップロードすることは、著作権者が持つ公衆送信権(送信可能化権を含む)、場合によっては複製権の問題となります。また、俳優や背景音楽の演奏家などの実演家も送信可能化権を有していますが、一旦実演家の許諾を得て録音・録画された映画については、送信可能化権を行使できないことが著作権法に定められています(これをワンチャンス主義といい、例外としてサントラ盤レコードを作成する場合があります)。したがって、実演家の許諾は必要ありません(第92条の2第2項)。
映画のアップロードに関わる著作権者には、映画そのものの著作権者のほか、映画の原作となった小説、脚本の著作権者、映画の中で利用されている背景音楽の著作権者などがいます。
そこで映画の著作権者についてですが、映画の著作物の著作者は、映画監督、撮影監督、美術監督、プロデューサーなど、映画の製作に創作的に寄与した者が該当します。しかし、著作権法第29条第1項により、著作者が映画製作者に対して映画製作に参加することを約束しているときは、著作権は映画製作者に帰属する、とされています。これは、映画製作者が担う責任は、資金調達から、製作スタッフの雇用、映画の公開までと大きいことや、また映画の製作には通常多額の資金が必要とされること、さらに映画の製作には数多くの関係者が関わっているため権利処理が煩雑になりがちなことを考慮し、権利を一括させているためです。

参照条文:著作権法第16条、第23条第1項、第29条第1項、第92条の2第2項

映画の盗撮の防止に関する法律について説明してください。

「映画の盗撮の防止に関する法律」(いわゆる「映画盗撮防止法」)が、2007年8月30日に施行されました。
著作権法の特別法として制定されたもので、映画館での映画(公開された日から8か月以内)の盗撮を防止し、海賊版の流通を防ぐ目的があります。
主な内容は次のとおりです。

  • 映画の盗撮の定義等
  • 映画館における映画の盗撮行為には、著作権法30条1項(私的使用のための複製)は適用されないこと
罰則

この法律自体には罰則規定は設けられていないため、刑事罰の適用は、著作権法および刑法に基づくものとなります。(著作権法119条1項⇒10年以下の懲役または1000万円以下の罰金またはその併科)映画の盗撮の防止に関する法律 (平成十九年五月三十日法律第六十五号)

(目的)

第一条:この法律は、映画館等における映画の盗撮により、映画の複製物が作成され、これが多数流通して映画産業に多大な被害が発生していることにかんがみ、映画の盗撮を防止するために必要な事項を定め、もって映画文化の振興及び映画産業の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

  1. 上映 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第十七号に規定する上映をいう。
  2. 映画館等 映画館その他不特定又は多数の者に対して映画の上映を行う会場であって当該映画の上映を主催する者によりその入場が管理されているものをいう。
  3. 映画の盗撮 映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画(映画館等における観衆から料金を受けて行われる上映に先立って観衆から料金を受けずに上映が行われるものを含み、著作権の目的となっているものに限る。以下単に「映画」という。)について、当該映画の影像の録画(著作権法第二条第一項第十四号に規定する録画をいう。)又は音声の録音(同項第十三号に規定する録音をいう。)をすること(当該映画の著作権者の許諾を得てする場合を除く。)をいう。
(映画産業の関係事業者による映画の盗撮の防止)

第三条:映画館等において映画の上映を主催する者その他映画産業の関係事業者は、映画の盗撮を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。

(映画の盗撮に関する著作権法の特例)

第四条:映画の盗撮については、著作権法第三十条第一項の規定は、適用せず、映画の盗撮を行った者に対する同法第百十九条第一項の規定の適用については、同項中「第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項」とあるのは、「第百十三条第三項」とする。
2:前項の規定は、最初に日本国内の映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われた日から起算して八月を経過した映画に係る映画の盗撮については、適用しない。

出版者にも著作権法上の権利がありますか?

出版者には著作隣接権は認められていませんが、著作者との契約で出版権を設定することはできます。
まず、出版者(法人であればその社員)が創作した著作物については、当然に出版者が著作権を持ちます。例えば、出版者が編集した雑誌は出版者が編集著作権を持つと同時に、記事や撮影した写真などの出版者が制作した(社員が制作した)著作物についても著作権を持ちます。
しかし、他人の著作物に対して特に創作的な工夫を施さずそのまま出版する場合においては、著作権法上出版者には著作隣接権のような権利は与えられていません。

著作権法には「出版権」という権利がありますが、これは出版社に当然に与えられている権利ではなく、著作者と出版者との契約で設定する権利です。出版権の設定を受けた出版者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的または化学的方法により文書または図画として複製する権利を専有します。出版権が設定された著作物を無断で出版された場合、出版者(出版権者)は差し止め請求や損害賠償請求も行えるため、単なる独占的出版契約よりも強い効力を持ちます(また、この場合、出版権侵害であると同時に著作権侵害でもありますので、著作権者も自己の著作権に基いて法的措置をとることが可能です)。

尚、従来、この規定は紙媒体の出版物を対象としており、その他の出版物は適用の外にありましたが、平成27年1月1日より、近年特に市場規模が増す電子出版物‐「記録媒体に記録された著作物の複製物(CD-ROM等電磁的記録での出版)」、「公衆送信(インターネット送信)」等‐にも同様の出版権が付与されています。

参照条文:著作権法第79条、第80条

実演家の範囲を教えてください。

歌手、俳優、演奏家など著作物を実演して伝達する者、著作物を演出する演出家や指揮者、その他マジシャンなど著作物を演じるわけではないが芸能的性質を有する演技を行う者も実演家に該当します。
実演とは、「著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること」を指します。これらを行う実演家は、「著作物を伝達する者」として、著作権とは別に著作隣接権で保護されています。
実演家の代表的な例としては、歌手、俳優、演奏家、舞踏家、落語家、漫才師、など著作物を演じる者が挙げられます。さらに著作物を実演していない場合でも、芸能的な性質を有していれば実演家としての保護が与えられており、例としては手品、曲芸、ものまね等を行う者が挙げられます。
また、舞台の演出家やオーケストラの指揮者も、直接演奏をしているわけではありませんが、実演そのものを行っているのと同一評価ができるため、実演家に含まれます。
なお、実演家として保護されるのはプロに限らず、素人でも著作物を実演する行為を行えば、同様に保護されます。

*このほか、実演家保護のために行われる国際的取組への貢献を目的とする、「視覚的実演に関する北京条約の実施に伴う規定の整備(著作権法第7条関係:視覚的実演条約が日本国について効力を生ずる日より施行)」が規定されています。

参照条文:著作権法第2条第1項第3号、第89条第1項

著作権法上、実演家にも人格権はありますか?

氏名表示権および同一性保持権があります。
従来、実演家人格権は認められていませんでしたが、平成14(2002)年の法律改正で新たに追加されました。著作者人格権は実演家の人格的利益を守る権利であり、「氏名表示権」、「同一性保持権」の2つの権利から成っています。著作者人格権に含まれる「公表権」(第18条)は付与されていませんが、これは実演が行われる際には、公表を前提として行われることが多いためです。

1. 氏名表示権

実演の公衆への提供または提示に際して、実演家名を表示するか否か、表示するとすれば実名か変名(芸名等)かなどを決定できる権利です。例えば、音楽が録音されたCDのジャケットに歌手や演奏家として氏名や芸名を表示すること、またはしないことを求めることができます。
ただし、実演の利用の目的・態様に照らして、「実演家の利益を害するおそれがない」場合または「公正な慣行に反しない」場合は、実演家名を省略することができ、例えばBGMとして音楽を利用する際に氏名表示を省略することがこれに当たります。

2. 同一性保持権

自分の実演について、無断で名誉または声望を害するような改変をされない権利です。例えば、最近ではデジタル技術によって俳優の顔や歌手の声を容易に改変することが可能ですが、それらの改変に対して実演家は同一性保持権を行使することができます。ただし、実演家の同一性保持権は「名誉又は声望を害するような改変」のみを対象としており、社会から受ける客観的な評価が低下するといった改変行為が認められる場合に、差止請求などができることになっています。
また、実演の性質やその利用の目的・態様に照らして、「やむを得ない」と認められる場合や、「公正な慣行に反しない」場合は除かれます。例えば、映画をテレビ放送する際に、放送時間の制約のために再編集することがこれに当たります。
これらの実演家人格権は実演家に一身専属であり、他人に譲渡することはできません。実演家人格権は実演家の死亡に伴って消滅しますが、実演家の死後も原則として実演家人格権の侵害となる行為を行うことはできません。

参照条文:著作権法第90条の2および3、第101条の2および3

レコード製作者の権利について教えてください。

複製権、送信可能化権、譲渡権、商業用レコードの貸与権(レコード発売後1年間でこの権利は消滅し、以後は報酬請求権)、商業用レコードの二次使用料請求権を有しています。
まず、「レコード」とは、「蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの」を指します)。「音」は音楽や落語といった著作物に限らず、鳥の声や波の音なども含まれます。「音の固定」とは録音のことですが、録音媒体は磁気テープ、CDなどさまざまな物が考えられます。「レコード製作者」とは、「レコードに固定されている音を最初に固定した者」のことです。また著作権法では「商業用レコード」という用語も使われますが、これは「市販の目的をもって製作されるレコードの複製物」を指し、市販のCDなどがこれに当たります。
レコード製作者が持つ権利は、財産権のみによって構成され、人格権は有しません。さらに「許諾権」と「報酬請求権」に分かれており、「許諾権」は他人に無断で利用されない権利、「報酬請求権」は他人が利用した際に使用料を請求できる権利をいいます。

1. 許諾権
  1. 複製権
    レコードを複製する権利。複製の手段としては実質的に録音に限定され、レコードから聞いた音楽を楽譜に写すことは含みません。CDを流した放送を受信し、これを録音することにも権利が及びます。
  2. 送信可能化権
    レコードを自動公衆送信が行われうる状態(サーバーにアップロードする等)に置く権利。
  3. 譲渡権
    レコードを公衆に譲渡する権利。一旦適法に譲渡されたレコードについてはその権利が消滅するため、以後の転売は自由です。
  4. 貸与権
    レコードを公衆に貸与する権利。レコード発売後1年間でこの権利は消滅し、以後は報酬請求権が適用されます。
2. 報酬請求権
  1. 商業用レコードの二次使用料請求権
    市販のCDなど商業用レコードを用いて放送や有線放送をする場合、放送・有線放送事業者に対して使用料を請求できる権利です。
  2. 商業用レコードの貸与報酬請求権
    市販のCDなどを公衆にレンタルする場合、レンタル店に対して使用料を請求できる権利です。発売後1年間は許諾権が働くため、それ以後の適用となります。

参照条文:著作権法第2条第1項第5-7号、第96条、第96条の2、第97条、第97条の2、第97条の3第1項および第3項

エルマークとは、何のことですか?

エルマークは、音楽ユーザーが安心して音楽配信を利用できる環境作りを目的として制定されました。エルマークは、音楽、デジタルコンテンツの配信サイトが著作権者の認可を経て正規に配信していることを示す識別マークであって、(社)日本レコード協会(RIAJ)が発行しています。
エルマークが登場した背景は次のような理由からです。

  1. 音楽ファイルや着うたを違法に配信するサイトが増加したこと。
  2. その増加に伴って、合法的なレコード会社などの事業者に深刻な損害を与えていること。

エルマークを表示することにより、サイトからコンテンツをダウンロードしようとするときに、そのサイトが正規にライセンスを受けているかユーザーが判断できるようにすることにあります。
エルマークの発行を受けたサイトには、エルマークのロゴや管理番号が表示されます。
Lマークの「L」は「ライセンス」をモチーフにしたものです。

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