業務のご案内

知的財産権・知的資産

著作者人格権という権利について

ある会社の依頼で広報紙に掲載するレポートを作成し、「紙面の関係上、必要に応じて表現に改変を加え、切除をしてもよい」との承諾をしました。ところができあがった広報紙を見ると、私の意図した結論とは全く逆の結論に書き換えられていました。著作権法上、違法ではないのでしょうか?

同一性保持権侵害に当たると思われます。
「必要に応じて表現に改変を加え、切除をしてもよい」との承諾がありますが、あくまでも紙面の構成上、やむを得ない範囲での改変・切除であって、このケースのように「逆の結論に書き換える」などの改変は、承諾の範囲を逸脱しているものと思われます。したがって、同一性保持権侵害に当たる可能性が高いと思われます。

参照条文:著作権法第20条第1項

著作者人格権について説明してください。

著作者人格権とは、著作者の人格的・精神的利益を保護するために認められた権利で、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つの権利によって構成されています。
公表権とは、未公表の著作物(同意を得ずに公表されたものも「未公表の著作物」に含まれます)を公表するか、しないか、または公表の時期・方法等を決定できる権利です。ただし、以下の項目に該当する場合は、著作者は公表に同意したものとして推定されます(著作権法第18条)。

  • 未公表著作物の著作権が譲渡された場合に、譲受人(著作権者)が公表すること
  • 著作者が未公表の美術または写真の著作物の原作品を譲渡した場合に、所有者となった者がそれを公衆に展示すること
  • 著作権法第29条により、映画の著作権が映画製作者に帰属する場合、著作権の行使として公表すること

氏名表示権とは、自分の著作物を公表する時に、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば、どのような名前とするかを決定する権利です(著作権法第19条)。ただし、著作物の利用目的や態様に照らして、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、著作者名の表示を省略することができます。
同一性保持権とは、著作物およびその題号の同一性を保持する権利で、著作者は自分の意に反して、無断で著作物およびその題号の変更、切除その他の改変を受けない権利を有しています。ただし、著作物の性質やその利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる場合は除かれます。

参照条文:著作権法第18条、第19条、第20条

他人の著作物を利用する場合、いかなる場合も修正を加えてはいけないのでしょうか?

著作者には同一性保持権があり、その意に反して著作物に修正を加えることは許されません。ただし、いくつかの例外があります。
同一性保持権は、以下の改変には適用されません。

  • 小学校、中学校、高等学校等の教科用図書に掲載するため、もしくは学校向け教育番組として放送するために、用字または用語の変更その他の改変をする行為で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの
  • 建築物の増築、改築、修繕または模様替えによる改変
  • 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、またはプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
  • その他著作物の性質並びにその利用の目的および態様に照らしやむを得ないと認められる改変

参照条文:著作権法第20条第2項

ある写真家の死後、未公表の作品が発見されました。公開したいと考えておりますが、問題はありませんか?

未公表の著作物を公表することは、著作者人格権に抵触する恐れがあります。
著作権は大別して、著作(財産)権と、著作者人格権とから成り立っています。著作(財産)権は、原則として著作者の死後50年間保護されますので、その写真家が亡くなったとしても著作(財産)権は消滅しません。
一方、著作者人格権は、著作者に一身に専属する権利ですので、著作者の死亡により権利としては消滅します。
しかしながら、著作者が死亡したからといって、未公表の著作物を公表したり、著作者の氏名や著作物の内容を勝手に変えたりはできません。著作者人格権の内容に抵触するような一定の行為が行われた場合は、一定の遺族が差し止め等の民事訴訟を提起したり、罰則が適用されます。
なお、著作(財産)権は、通常の相続財産と全く同様に扱うことができるため、遺言や相続人の協議で誰かに集中して相続させることもできます。
また、財産の帰属について特別な取り決め等をしなかった場合は、民法の規定に基づいて、配偶者や子供などに法定相続されることになりますし、法定相続人が複数いるときは、著作権は相続人全員の共有となります。相続人不存在で著作権が国庫に帰属する場合は、著作権は消滅します。

参照条文:著作権法第51条、第59条、第60条、第62条、第116条、第120条

行政機関情報公開法に基づき未公表の著作物を公開する場合、著作権法上の問題はないのでしょうか?

著作権法上の問題は、原則としてありません。
情報公開法等の手続に従って情報(著作物)の開示が決定された場合は、原則として、著作権法上の公表権は働きません。著作権法では、情報公開の促進を図るための調整規定を置いています。
著作権法では、情報公開法や情報公開条例の定めによって行政機関に開示義務がある情報や公益上の必要から開示されるものについては、公表権自体が適用されないこととされています。
また、それ以外の情報については、行政機関に情報を提供した者が開示決定までの間に開示に同意しない旨の意思表示をした場合以外には、行政機関が開示決定をしたときには、著作者は公表に同意したものとみなされることになります。

参照条文:著作権法第18条第1項、第18条第4項、第18条第3項

匿名希望ということで投稿した文章を、雑誌に本名で掲載されてしまいました。著作者人格権の侵害ではないですか?

著作者人格権の侵害になると思われます。
匿名希望で投稿した文章を雑誌に本名で掲載されてしまった場合、その行為は氏名表示権の侵害と考えられます。
著作者人格権の一つである氏名表示権は、著作物が公にされる際に、自分の本名やペンネーム等(変名)を著作者名として表示することだけでなく、著作者名を表示しないことにする権利も含まれます。
著作者本人が匿名を望んでいるのに、勝手に本名を表示することは、たとえ本名であっても氏名表示権の侵害になります。

参照条文:著作権法第19条

このページの先頭へ