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知的財産権・知的資産

著作権と著作権者について

著作権の制作を委託した者と受託した者、どちらが著作権者となるのでしょうか? 委託者側が制作費を提供したのですが。

原則として、実際に創作した者(受託者)が著作権者となります。
作物の制作を委託したり、制作費を負担したという事実だけでは著作権者となることはありません。実際に創作したのは受託者ですから、原則としてその者が著作権者となります。ただし、委託者が著作物の表現や内容について創作過程で詳細なる指示を行い、具体的に創作に関与している場合は、著作者または共同著作者として権利を有する場合もあり得ます。 また、著作権は契約によって譲渡することも可能ですので、それにより著作権の帰属先を委託者とすることもできます。ただし、著作者人格権だけは一身専属権ですので、譲渡することはできません。

参照条文:著作権法第2条第1項第2号

映画の著作権者について教えてください。

アイデアは保護対象ではありません。
著作物の創作という行為に基づいて、著作者が著作権者になるのが原則ですが、映画の著作物については、その例外となっています。著作権法第16条によれば「映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、または複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする」となっています。例示すればプロデューサー、映画監督、ディレクター、撮影監督、美術監督などですが、映画の全体的形成に創作的な寄与をしていなければなりません。
これらの者が映画製作者に対し、映画の製作に参加することを約束しているときは、映画の完成と同時に映画の著作権は映画製作者に帰属するものとされています(著作権法第29条第1項)。これは、映画の円滑な利用のため、著作権を特定の者(映画製作者)に集中する必要があるからです。ただし、著作者 人格権だけは著作者に残っているので注意を要します。
また、映画監督などが映画製作会社の社員である場合には、法人著作が成立し、映画製作会社が著作者および著作権者となります。
なお、テレビドラマ等、放送事業者が製作する映画については別の条項があります。

参照条文:著作権法第16条、第29条第1項

原稿の買取りは、著作権の譲渡を意味しますか?

「買取り」という用語については、業界によって意味が異なり、必ずしも明確ではありません。
「原稿の買取り」の意味するところは、著作権の譲渡というよりも、「著作権使用料の一括払い」、別の言い方をすれば「定額方式」を指すことが多いと思われます。つまり、印税方式(将来的な商品の売上実績に応じて使用料を支払う方式)ではなく、一括払いということです。
「買取り」については、契約当事者の解釈が異なることも少なくないため、契約上、著作権の譲渡なのか、単なる利用許諾なのかを明確にする必要があります。

参照条文:著作権法第61条

小説コンクールに応募した場合、著作権は主催者に移ってしまいますか?

応募の条件・要項の記載により著作権の帰属が異なります。
もともと応募作品の著作権および著作者人格権は創作者である応募者にあり ます。応募したからといって、著作権が自動的に主催者に移転することはありません。ですから原則として、応募条件などに著作権についての記載がない場合は、そのまま応募者が著作権者ということになります。
これに対して、その取り扱いが記載されていれば、著作権の帰属や扱いはそれに従って決まります。「著作権は主催者に帰属する」という記載がある場合がありますが、この場合には、著作権が主催者に譲渡されることを意味しています(ただし、翻訳権・翻案権等(法27条)、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(法28条)は、特掲されていない限り著作者に留保されたものと推定されます)。 その他、一定範囲の利用を目的として、出版権、映画化、文庫化などを前提とした事前の権利許諾を定めたものがあります。

参照条文:著作権法第27条、第28条

私はある会社の社員ですが、仕事上で作成した資料や図面、イラスト、プログラム等の著作物は会社のものですか?

一定の要件を満たせば会社が著作権を持ちます。
著作権法では、著作者は原則的には自然人であるとしながらも、一定の要件を満たすときには、法人が著作者であるとしています。ここで、一定の要件とは、

  1. 法人等の発意に基づくものであること
  2. 法人等の業務に従事する者が作成するものであること
  3. 職務上作成するものであること
  4. 法人等が自己の名義で公表するものであること(公表するとすれば法人名義で公表するであろう著作物を含む)
  5. 作成時の契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

です。なお、プログラムの著作物の場合には、法人名義の公表要件(上述4)は要求されていませんが、その他は同様です。

参照条文:著作権法第15条第1項及び第2項

アナログの著作物をデジタル化した場合、デジタル化した人に権利はありますか?

現状では特にありません。
アナログの著作物をデジタル化した人には、「デジタル化権」として一定の権利を認めようとする考えはあります。確かに、アナログ情報をデジタル情報に変換する作業に価値を認めて何らかの権利を認める、という言い分にも一理あります。
しかしながら、アナログ情報をデジタル情報にする作業(デジタル化)は、単なる情報の固定方法の変換であって、この作業自体は機械的なもので、変換に伴う操作に創作的要素が入る余地がほとんどない、と一般的には考えらています。
また、デジタル化権という権利を認めることによる弊害、例えば著作物などを利用する際に大きな制約となって、かえって文化の発展を阻害するという考えもあり、現状ではデジタル化した者の権利は認められていません。

参照条文:著作権法第21条

ある学術書を出版する際、知人である大学教授に監修をお願いしました。監修者も著作者とみるべきでしょうか?

監修者が著作者となるかどうかはケースバイケースです。
その監修者がどの程度学術書の製作に関与しているかによります。学術書に権威を付けるために監修者の名前を冠しただけで、実質的には製作に関与していない場合や、あるいはただ単に字句の修正を行った、または表現につき部分的にアドバイスをした程度では、一般的には著作者とはなりません。
しかし、監修者が自ら内容を検討し、相当部分について補正加筆するなど、著作物への創作的寄与があったと見られる場合は、監修者も共同著作者となり得ます。

参考条文:著作権法第2条第1項第2号および第12号

放送用ドラマの著作権者について教えてください。

放送事業者が製作した場合と、外部に製作委託した場合とでは異なります。
放送用のドラマは、生放送でない限り「映画の著作物」に該当します。その著作権の帰属については、放送事業者が自社製作したドラマと、外部に製作を委託したドラマとでは異なります。

  1. 放送事業者が自社製作したドラマの場合
    • 放送事業者の職員であるプロデューサー等が製作した場合
      ドラマは法人著作となり、放送事業者が著作者となって全ての著作権を持ちます。
    • 外部からディレクター等のスタッフを雇用して製作した場合
      ドラマの著作者はその外部スタッフになります。しかし著作権を全て外部スタッフに委ねるとドラマの放送に支障が生じるため、放送事業者は「著作物を放送する権利」、「放送される著作物を有線放送し自動公衆送信を行う権利、又は受信装置を用いて公に伝達する権利」「複製する権利」「複製物により放送事業者に頒布する権利」など、放送関連に限定された権利を持ちます。
  2. プロダクション等にドラマの製作を外部委託した場合
    • プロダクション等の自社職員が製作した場合
      法人著作が成立し、プロダクション等が著作者となり、すべての著作権を有します。
    • さらに外部からディレクター等のスタッフを雇用して製作した場合
      その外部スタッフがドラマの著作者となりますが、著作権法29条1項により、すべての著作権はプロダクション等に帰属します。
  3. 放送事業者とディレクター等の外部スタッフまたはプロダクション等が共同でドラマを製作した場合
    • 放送事業者と外部スタッフまたはプロダクション等が共同して著作者となり、著作権を共有します。

参照条文:著作権法第10条第1項第7号、第15条第1項、第16条、第29条第1項および第2項

自動スピード写真機で撮影した写真は、著作権法上の著作物に当たりますか?また著作者は写真機の設置者ですか?

著作物には当たりません。
写真の著作物と言えるためには、カメラを用いてその人なりの創作性(モチーフ、構図、シャッターチャンスなど)が表現されていることが必要です。自動スピード写真機による証明写真は、被写体が座ると自動的にシャッターが切られる仕組みであるため、そこに創作性は認められません。一般的には著作権法上の写真の著作物には当たらないといえるでしょう。
同様に、写真機の設置者も撮影に際して創作的な活動を行っているわけではないので、著作者には当たりません。

参照条文:著作権法第2条第1項第1号、第10条第1項第8号

座談会における出席者の発言をそのまま記録した文章は、著作物でしょうか?著作者は誰になりますか?

座談会参加者全員の共同著作物となり、全員が共同で著作権を持つ場合が多いと思われます。
一般に、座談会における出席者の発言をそのまま記録した文章は「言語の著作物」であり、出席者全員の「共同著作物」である場合が多いと言えます。「共同著作物」とは、「二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」を言います。ただし、出席者が座談会に参加する際にあらかじめ出版社などと著作権譲渡契約等を交わしていた場合は、この限りではありません。
一方、座談会での発言を元にして表現上の工夫が加えられた文章であれば、出席者はその編集過程で手を加えていない限り文章の素材を提供したにとどまるとみなされ、著作者とはなりません(判例:「SMAPインタビュー記事事件」平成10年10月29日、東京地裁)。

参照条文:著作権法第2条第1項第1号および第12号、第10条第1項第1号

会社の仕事として数名で統計資料を作成しましたが、未だ公表されないままになっております。この統計資料の著作権は誰のものですか?

会社が著作権を持つ可能性が高いでしょう。
まず統計資料について、数値データそのものは著作物ではありませんが、素材の選択や配列に創作性があるものは「編集著作物」となります。また学術的性質を有するものであって、かつ創作的に表現された図表である場合には、「図形の著作物」として保護される可能性があります。
そのような著作物性のある統計資料であったとして、さらに次の条件を満たす場合には、会社が著作権を持つことになります。

  1. 法人の発意に基づき作成されるものであること
  2. 法人の業務に従事する者により作成されるものであること
  3. 法人の従業者の職務上作成されるものであること
  4. 法人の著作名義の下に公表するものであること
  5. その作成のときにおける契約・勤務規則等に別段の定めがないこと

このケースでは資料が未公表ということですが、仮に公表するとすれば法人等の名義で公表される性格のものであれば、やはり会社が著作権を持つ可能性が高いと考えられます(判例:「新潟鉄工事件控訴審」昭和60年12月4日、東京高裁)。

参照条文:著作権法第2条第1項第1号、第10条第1項第6号、第12条第1項、第15条第1項

医学分野の学会に投稿した論文が学会誌に掲載されました。論文の著作権は学会にあるのでしょうか?

学会の規約や投稿規程によります。
医学分野の論文も著作物に当たりますが、一般的には論文の著作者が著作権を有していると考えられます。ただし、学会の規約や投稿規程などによっては、「学会誌に掲載された論文の著作権は学会に帰属する」旨の記載がある場合があります。このような場合には、論文の著作者から学会へ著作権譲渡がなされたと考えられますので、著作権は学会に帰属します。もっとも、譲渡されるのは、財産権としての著作権であり、著作者人格権は著作者に帰属しています。

参照条文:著作権法第61条、第59条

私は作曲家として数多くの作品を世に送り出しておりますが、音楽出版社との間で著作権契約を締結して楽曲の管理を任せています。実際には、JASRACが著作権の許諾を行っているようですが、しくみがよく理解できません。権利関係はどうなっているのでしょうか?

音楽出版社とJASRACとの間で「著作権信託契約」が結ばれます。
作曲家である著作権者は、音楽出版社との間で自己の楽曲をテレビ局やラジオ局で使われるように売り込み(プロモート)してもらうかわりに、著作権を譲渡する契約(著作権譲渡契約)を締結します。楽曲が使われた場合、著作権の譲渡を受けた音楽出版社は、楽曲の使用料を作曲家と分け合うのです。この場合、音楽出版社は自分で著作権の管理を行うこともできますが、多くの場合、JASRACと「著作権信託契約」を結び、著作権の管理を委ねます。この契約により、著作権はJASRACに形式的に移転するので、著作権者はJASRACとなります。そしてJASRACは、著作物の利用者(コンサート、カラオケ、CD等)に対して利用許諾をする代わりに、著作権使用料を徴収するのです。
この著作権使用料は、JASRACからまず音楽出版社に配分され、音楽出版社から著作権者である作曲家に再分配されます。
以上のように、著作権者 ⇒ 音楽出版社 ⇒ JASRACと著作権が移転しますが、著作権のうち著作者人格権は一身専属的で第三者に譲渡することができないので、JASRACが持っているのは財産権としての著作権です。

私はある有名人の依頼でゴーストライターとして小説を書きました。著者名をその有名人の名で出版した場合、著作者は誰になるのでしょうか?

著作権法上は、公表の際に著作者名として表示されている者が著作者と推定されます。
本来であれば、実際に小説を創作したゴーストライターが著作者となるはずですが、著作権法第14条に「著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する」とあるため、ゴーストライターによる反証(自らが著作者であることの主張・証明)がないかぎり、著作者名として公表されている有名人が著作者として扱われます。また、著作者ではない人の実名や周知の変名を表示して出版などを行うことは、世間を欺き、社会に混乱を生じさせることになりますから、著作者名詐称の罪(第121条)で罰せられる場合があります。

参照条文:著作権法第14条、第121条

百科事典の著作権について教えてください。

個々の著作権の他に、編集著作権も問題となります。
百科事典にはいろいろな解説・記事が収録されています。中には「単なるデータ」等著作物に当たらないものもありますが、「思想または感情」を表現したものとして著作物に当たるものが多いと考えられます。
さらに、百科事典の場合には、1.何を収録するか、2.それをどのように配置・構成するかについて「創作性」が認められれば、収録された個々の素材とは別に「編集著作物」として保護されます。
したがって、百科事典のような編集著作物を複製する場合には、収録されている個々の著作物の著作者の許諾の他に、編集著作物の著作者の許諾も必要とされます。

参照条文:著作権法第12条

著作権者が会社である場合、その会社が倒産したときには著作権はどのように扱われるのでしょうか?

著作権が消滅する場合もあります。
法人が株式会社の場合、解散により著作権は残余財産の一つとして処分されますので、株主に残余財産として分配されている可能性があります。この場合には著作権は消滅しておらず、これに対し、著作権が処分されず取り残されているなど、著作権が国庫に帰属すべきこととなる場合には、著作権は消滅します。したがって、当該著作物を自由に利用することができます。
なお、倒産に際し、会社から債権者に著作権が譲渡されている可能性もあります。この場合には、著作権は消滅していません。文化庁において著作権の移転登録がなされている可能性もあります。

参照条文:会社法第105条第1項第2号、著作権法第62条第1項第2号、同法第77条第1号、民法第72条第3項

著作権は相続できますか?

著作権は財産権の一つですから、相続の対象となります。
著作権のうち、複製権や公衆送信権などの「財産権としての著作権」は相続の対象となりますが、公表権・氏名表示権・同一性保持権といった著作者人格権は一身専属的な権利ですから、譲渡や相続の対象とはなりません。相続に関しては、著作権も他の財産と同様に、遺言書や遺産分割協議書でその帰属を定めることができ、共有とすることも可能です。ただし、共有とした場合、他の共有者全員の同意を得ない限り、その持分を譲渡したり、質権の目的としたりすることはできません。
また、第三者に著作権の利用許諾をする場合にも原則として他の共有者全員の同意を得る必要があります。

参照条文:著作権法第65条第1項、第65条第2項

相続人が不存在の場合、著作権はどうなりますか?

当該著作権は消滅します。
民法第959条によれば、帰属先のない財産は国庫に帰属することになります。しかし、著作権に関しては、国庫に帰属させるよりも著作権法の趣旨にしたがい、広く国民に利用させるほうが文化の発展に寄与する目的を達することができます。しがって、相続人不存在等により著作権が国庫に帰属することになる場合は、当該著作権は消滅するものとされています。

参照条文:著作権法第62条第1項第1号

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