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知的財産権・知的資産

著作物と著作権の取得、権利の保護期間について

著作物とは何ですか?

「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽 の範囲に属するもの」をいいます。

  • 「思想又は感情」
    人間の知的・精神的活動をいい、単なる自然上のまたは社会的な事実やデ ータは除かれます。
  • 「創作的に」
    単なる模倣ではなく、作者の個性が現れていることが必要です。また、制作過程で創作性が発揮されていれば、結果的に他人の著作物と類似したものが出来上がっても著作権は認められます(偶然の一致)。この点、特許権との相違がみられ、新規性や進歩性も要求されていません。
  • 「表現したもの」
    頭の中で考えているだけ(想像、アイデア)で、表現していなければ著作物とは言えません。著作権は「表現」を保護するものであって、アイデア を保護するものではないからです。
  • 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
    人間の知的・文化的精神活動の所産全般を意味するものであって、各ジャンルに該当するか否かの判断の基準を示したものではありません。また、ここでいう「もの」とは、物体ではなく、その中に表現されている無体のもの を示しています。

著作権法第10条1項では、著作物の種類について次のように例示しています。

  • 言語の著作物(講演、論文、小説など)
  • 音楽の著作物(楽曲、楽曲を伴う歌詞)
  • 舞踏・無言劇の著作物(日本舞踊、ダンス、パントマイムなどの振り付けなど)
  • 美術の著作物(絵画、版画、彫刻、書など)
  • 建築の著作物(建物、庭園、橋など)
  • 図形の著作物(地図、設計図、学術的性質を有する図面、図表、立体模型など)
  • 映画の著作物(劇場用映画、アニメ、ビデオ作品、生放送でないテレビ番組など)
  • 写真の著作物
  • プログラムの著作物

以上は、あくまでも例示にすぎませんので、それ以外にも上記著作物の定義に該当するものであれば、著作物として保護される可能性があります。

参照条文:著作権法第2条第1項第1号、第10条第1項

著作権でアイデアも保護できますか?

アイデアは保護対象ではありません。
著作権で保護されるのは、あくまでも「表現」です。アイデア自体は著作物ではありません。例えば、誰かがある発明品を創作し、論文に書いたとすると、この場合著作権で保護されるのはあくまでも論文の表現そのものです。論文の文章を無断でそのまま転用すれば著作権侵害となりますが、アイデアを別の表現で論文に書いたとしても、著作権法上では問題となりません。アイデアを保護するのは、特許法、実用新案法などです。

参照条文:著作権法第2条第1項第1号

著作権を取得するための手続きを教えてください。

特に手続きは必要ありません。
著作権は、著作物を創作したときに自動的に発生しますので、権利取得のための手続きは特に必要ありません。これを無方式主義といいます。文化庁には登録制度がありますが、これは登録することにより、著作権に関する事実 関係を公示したり取引の安全を確保することが目的です。

参照条文:著作権法第17条第2項

自動車のデザインは著作物ですか?

応用美術については、判例を参考にして個別具体的に検討する必要があります。
一般的に美術作品は、純粋美術と応用美術に分けられます。純粋美術とは、 思想または感情が表現されていて、専ら鑑賞を目的として創作されたものをいい、応用美術とは実用品のデザインとして創作されたものをいいます。絵画や彫刻のような純粋美術は「著作権法」で保護されますが、自動車のデザ インなどの応用美術は、原則として「意匠法」で保護すべきとされています。
しかし、著作権に関する条約である「ベルヌ条約」では、応用美術を著作権で保護することを否定したわけではなく、著作権で保護するかどうかはその国の考え方に委ねるとされています。判例においても応用美術について著作物性を認めるケースもあり、見解の分かれるところでもあります。判例としては「ファービー人形事件」などがあり、「応用美術のうちでも、純粋美 術と同視できる程度に美術鑑賞の対象とされると認められるものは、美術の著作物として著作権法上の保護の対象となると解釈することができる」とさ れています。

標語、キャッチフレーズ、題名などは著作物になりますか?

個々のケースに応じて判断されます。
標語やキャッチフレーズのように言葉を語呂よく羅列したものは、誰もが考え付くようなありふれた表現として創作性がないと判断されることが多いです。しかし、その言語表現に創作性があれば著作物とみなされる場合もあり、過去には五・七・五調を用いて作成された交通安全のための交通標語に著作物性を認めた判例もあります(「交通安全標語の類似事件」平成13年5月30日、東京地裁)。また、題名に関しても同様のことが言えます。

参照条文:著作権法第2条第1項第1号

ホームページやブログなどは、著作権法で保護されますか?

保護される場合が多いです。
ホームページやブログには、文字、写真、イラスト、映像、音楽等たくさんの情報が掲載されています。文字は「言語の著作物」、写真は「写真の著作物」、イラストは「美術の著作物」映像は「映画の著作物」、音楽は「音楽の著作物」として著作権法で保護されます。したがって、無断で利用することは原則的には著作権法違反となります。
しかし、中には、人の思想・感情を伴わない「単なるデータ」等著作物でないものも掲載されていますが、これは著作権の対象とはなりません。
なお、ホームページ全体も「編集著作物」として著作権の対象となります。が、最近の判例では、タブメニューの配置の類似性が争点になった事案で要保護性が否定された事例があります(データSOS事件 知財高裁平成23年5月26日判決平成23(ネ)10006損害賠償等請求控訴事件)。

参照条文:著作権法第10条第1項各号

著作権が消滅しているはずの古美術や社寺などの古い建造物を写真に撮影する際、所蔵者や社寺等に許可を得るのはなぜですか?

著作権ではなく、所有権に基づいて許可を要求しています。
古美術や社寺などの古い建造物は「著作物」に該当します。しかし、これらは古い時代に創作されたものですから当然に著作物としての保護期間は経過しており、著作権は消滅しています。
それにもかかわらずこれらを写真に撮影する際に許可を要求しているのは、所蔵者が自ら有する所有権を行使した結果と考えられます。所有権とは、人(所有者)が特定の物(所有物)を、法令の制限内において自由に使用、収益、処分することができる権利です。したがって、所蔵者が所有権に基づきその所蔵物の利用につき制限を加える、すなわち許可を得なければ写真撮影を許さないという制限を加えることができると考えられます。

参考条文:民法第206条

二次的著作物とは、どういうものですか?

既存の著作物(原作)に新たな創作性を加えて創られたものです。
英語の小説を日本語に翻訳した場合のように、一つの著作物を原作とし、新たな創作性を加えて創られたものは、原作となった著作物とは別の著作物として保護されます。これを「二次的著作物」といいます。
この二次的著作物を創作する場合には、原作の著作者の許諾が必要です。たとえば、Aさんの英語の小説(原作)をBさんが日本語に翻訳するには、原作者Aさんの許諾が必要です(二次的著作物の創作権)。
また、第三者Cさんが、二次的著作物(日本語の小説)を利用(複製・譲渡)するに当たっては二次的著作物の著作者であるBさんの許諾のほかに、原作の著作者であるAさんの許諾を得ることも必要です(二次的著作物の利用権)

参照条文:著作権法第27条、第28条

自分がある著作物を創作後、既存の著作物とよく似ていることがわかりました。後に創作した著作物には著作権が認められないのでしょうか?

既存の著作物に接する機会がなく、その存在・内容を知らなかった場合には、著作権が認められます。
既存の著作物に接する機会がなくその存在・内容を知らずに創作したものが、偶然よく似たものであった場合には、著作権侵害とはなりません。 この場合には、後で創作した著作物にも著作権が認められます。
ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件(昭和53年9月7日、最高裁第1小法廷)では、被告の作成した楽曲「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」が、ハリーウォレン作曲の「The Boulevard of Dreams」(夢破れし並木路)を複製したものといえるかどうかが争われました。
この点につき最高裁判所は、「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容および形式を覚知させるに足りるものを再生することをいうと解すべきであるから、既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことには当たらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はない。」と判示しました。

共同著作物と結合著作物の違いがわかりません。

各人の寄与分を分離して個別に利用できるかどうかが両者の違いです。
二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与分を分離して個別に利用できないものを「共同著作物」といいます。たとえば、論文を作成するに際し、誰がどこを分担するか決めずに数人で共同して創作した場合は、それぞれの人が創作した部分を明確に区分できないので共同著作物に当たります。
これに対し、楽曲と歌詞は、本来は一体的なものとして創作され利用されるものですが、なお分離して個別に利用することが可能であり、それぞれが独立の著作物といえます。これは「結合著作物」と呼ばれています。
「共同著作物」の場合、著作権法上、原則として共有者全員の合意によりその権利を行使することとされています。したがって、共同著作物の利用については共同著作者「全員」の許諾が必要です。またその保護期間は、最後に死亡した著作者の死亡時から起算します(50年)。
他方、「結合著作物」の場合、その利用について著作者各人の判断で許諾できます。また保護期間もその著作者個人の期間となります。

参照条文:著作権法第2条第1項第12号、第65条第2項

ある方が書いた原案をもとに、映画をつくりたいと思っています。原案も著作物に当たるのでしょうか?

原案の内容によります。
原案といっても様々なものがあると思われます。単純にテーマや設定にとどまり、具体的なエピソードやあらすじ、ストーリーを含んでいないものは、単なるアイデアの域に止まっており、著作物と言えないケースが多いと考えられます。
しかし、アイデアと著作物との境は明確ではなく、どの程度であれば、著作物となるかについては回答が難しい面があります。ストーリーやエピソードなどを含み、脚本化する上で十分な具体性がある、つまり具体的であればあるほど、原案について著作物性が認められることが濃厚と言えるのではないでしょうか。

著作権の保護期間について教えてください。

保護期間は、原則として創作の時から著作者の死後50年を経過するまでです。
著作権法は、著作者に多くの権利を認め保護する一方、一定期間が経過した著作物等については、万人共有の財産として自由に利用できるとしています。
保護期間は、原則として「創作の時から著作者の死後50年を経過するまで」です。しかし、以下のような例外を認めています。

1. 無名・変名の著作物

公表後50年まで
但し

  1. 死後50年経過が明らかなときは、死後50年を経過したと認められる時まで
  2. 周知の変名のときは、死後50年まで
  3. 実名の登録を文化庁にした場合は、死後50年まで
  4. 公表後50年以内に、実名または周知の変名で公表し直した場合は、死後50年まで
2. 法人等団体名義の著作物

(公表名義が法人等団体の場合。著作者が法人であるか個人であるかは問わない)※1
公表後50年まで
但し

  1. 創作後50年以内に公表されなかったときは、創作後50年まで
  2. 公表後50年以内に真実の著作者である個人がその実名または周知の変名を著作者名として公表し直した場合は、死後50年まで
3. 映画の著作物

公表後70年まで
但し、創作後70年以内に公表されなかった場合は、創作後70年まで
※1 なお、プログラムの著作物に関しては、著作権法第15条第2項により、法人著作が成立する要件として公表名義を必要としていないため、法人が著作者であるプログラムの著作物については、名義いかんにかかわらず「法人名義の著作物」に従うとされている。

参照条文:著作権法第51~54条

著作権の保護期間はどのように計算するのですか?

「暦年主義」という計算方法によります。
著作権法においては、保護期間の計算方法を簡単にするため、暦年主義という計算方法を採用しています。これにより、すべての期間は、死亡、公表、創作した年の「翌年の1月1日」から計算します。
例えば、実名の著作物でその著作者が平成20年11月11日に死亡した場合には、翌年の平成21年1月1日から起算して50年後の平成70年12月31日まで保護されます。

参照条文:著作権法第57条

共同著作物、定期刊行物、連続ドラマ等の保護期間について、それぞれどのように考えればよいですか?

具体的には以下のようになります。
著作者が複数いる共同著作物の場合、その保護期間は共同著作者のうち最後に死亡した者の死後50年までとされています。
定期刊行物、連続ドラマについては、その保護期間が「公表後50年ないし70年」とされている場合、公表時点をいつにするかという問題が生じます。
まず、新聞・雑誌のような定期刊行物の場合には、毎冊、毎号または毎回の公をもって公表の時とされています。したがって、月刊の雑誌の場合、毎月が公表の時となり、新聞の場合は、毎日が公表の時となります。
次に連続ドラマのように、一部分ずつを公表する著作物については、最終部分の公表をもって公表の時とされます。したがって、連続ドラマの場合、最終回が公表の時となります。そして連続ドラマは映画の著作物に当たるため、保護期間は70年となります。もっとも、連続ドラマが中断し、3年を経過しても次のドラマが公表されないときは、すでに公表されたもののうち最終部分の公表時をもって公表の時とされています。

参照条文:著作権法第51条第2項、第56条

「戦時加算」の特例とは、どのようなものですか。

第二次世界大戦で戦った連合国の著作物について、通常の保護期間に加えて一定の期間を加算して保護することが定められています。
「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」(連合国特例法)の第4条では、日本が第二次世界大戦後サンフランシスコで締結された平和条約により条約関係にある連合国(アメリカ・イギリス・フランス等)および連合国の国民が、第二次世界大戦前または大戦中(平和条約の発効前日まで)に取得していた著作権については、通常の日本における保護期間に戦争期間(アメリカ・イギリスオーストラリア・カナダ・フランスなどは3,794日)を加算した期間、日本において著作権を保護しなければならない、とされています。 これは、戦争中は日本においては相手国の著作物を保護していなかったとの考えから、加算義務を課しています。

参照条文:「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」第4条

「実演」に関する著作隣接権、「レコード」に関する著作隣接権、「放送事業者」に関する著作隣接権は、それぞれいつまで保護されるのですか。

それぞれ50年保護されます。(保護期間の始期については以下)
著作隣接権も著作権と同様に、以下のような保護期間が定められています。

  保護期間の始期 保護期間の終期
実演 その実演を行ったとき 実演後50年
レコード その音を最初に固定(録音)したとき 発行(発売)後50年
(発行されなかったときは固定(録音)後50年
放送 その放送を行ったとき 放送後50年
有線放送 その有線放送を行ったとき 有線放送後50年

参照条文:著作権法第101条

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